第1回 粒子法って何? | 粒子法入門

1. 粒子法って何?

『リュウシホウ』って何かご存知ですか。ゲームやアニメで出てくる武器の粒子砲では、もちろんありません。流体シミュレーションの『粒子法』[1-3]です。流体とは簡単にいうと、液体や気体です。粒子法は流体の運動などをコンピュータで予測することができる計算方法の一つです。

この粒子法は、現在、産業界や学術界で大きな注目を集めています。それはなぜかと言いますと、これまでにシミュレーションできなかった現象を計算できるからです。少し大げさな表現でいうと『シミュレーション界の救世主』とも言えるのです。

2. 粒子法を使えば簡単に計算できます

これまでにシミュレーションの計算方法として主なものでは、差分法、有限要素法、境界要素法、等があり、航空・宇宙工学、機械工学、土木工学、化学工学などにおいてすばらしい成果を挙げてきました。しかし、これらの従来手法では計算することが難しい多くの現象が残っているのです。粒子法を使えば、そういう現象を簡単に計算できることが多いのです。

例1

タンクスロッシング(タンク内の液体が地震などで揺らされる現象)を例にとって説明しましょう。図1(a)に示すような液体の運動が小さい場合は、従来手法でも容易に計算することができます。しかし、図1(b)に示すように大きく液体が揺らされると、液体の表面の形状が複雑に変化します。液体が液滴に分裂したり、液滴が合体したりもします。ここまで複雑な現象になると、従来手法では、非常に高度な工夫を導入したり、膨大な計算時間をかける必要がでてきたりします。

(a) 小さい揺れ(易しい)
(b)大きい揺れ(難しい)

図1 タンクスロッシング計算の難しさの分類

このような液体の表面形状が複雑に変化する現象のシミュレーションに粒子法を使えば、粒子(計算点)を用いて簡単に計算できます(動画1)。粒子の集まりとして計算しますから、液体が大きく変形しようが、分裂・合体しようが簡単に計算できます。水がバシャバシャ跳ねるようなシミュレーションは、得意中の得意です。

動画1 粒子法による計算例1(タンクスロッシング)
例2

次に、管内流れ(パイプなどの中の流体の流れ)を例に考えてみましょう。図2(a)のようなパイプの中の液体の流れは、従来手法でも簡単に高精度に計算することができます。管の中が流体で満たされており、流体の全体としての形状が変わらないからです。しかし、図2(b)のように管の端で液体が放出されるような現象は、従来手法では計算がかなり難しくなります。その理由は、大きく変形・分裂する流体の表面形状を精度良く求める必要があるからです。

(a) 管内流れ(易しい)
(b)管からの流出(難しい)

図2 管内を流れる流体に関する計算の難しさの分類
(図中の矢印は流速ベクトルを、点線は速度分布を表す)

粒子法を使えば、こういう現象も簡単に計算することができます(動画2)。

​動画2 粒子法による計算例2(管から流出する流体)

粒子法のイメージがわいてきましたでしょうか。次回からは、粒子法のもう少し詳しい内容についてお話する予定です。お楽しみに。

参考文献:

  1. Koshizuka S, Tamako H, Oka Y (1995) A particle method for incompressible viscous flow with fluid fragmentation. Comput Fluid Dynamics J 4:29-46
  2. Koshizuka S, Oka Y (1996) Moving-particle semi-implicit method for fragmentation of incom-pressible fluid. Nucl Sci Eng 123 (3):421-434
  3. 越塚誠一、柴田和也、室谷浩平、粒子法入門、丸善出版、2014年6月25日

著者ご紹介

東京大学大学院 工学系研究科
システム創成学専攻 准教授
プロメテック・ソフトウェア技術顧問
柴田 和也 先生

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2007年
東京大学大学院 工学系研究科
システム量子工学専攻 博士課程修了 博士(工学)

2007年
(独)海上技術安全研究所 入所
​海の10モードプロジェクトチーム研究員

2009年
東京大学大学院 工学系研究科 システム創成学専攻 助教

2013年
東京大学大学院 工学系研究科 システム創成学専攻 講師

2017年
東京大学大学院 工学系研究科 システム創成学専攻 准教授